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日本山岳会 千葉支部

北海道山行:幌尻岳&利尻山

幌尻岳

山行日:7月14日~16日(全日晴れ)

参加者:3名

タイム:14日:ふかふか亭5:50→イドンナップ山荘7:55→新冠ポロシリ山荘15:22

15日:山荘4:45→徒渉地点5:44→中間地点7:48→大岩10:19→幌尻岳山頂10:44→肩11:30→

山頂下山開始13:05→沢トラバース地点14:00→新冠ポロシリ山荘着16:48

16日:山荘出発5:25→ヒグマ遭遇7:40→大理石沢8:22→イドンナップ山荘11:35→

新冠レコードの湯15:56

7月14日:初日「ヒグマの潜む18.5kの林道歩き」

宿の「ふかふか亭」を午前5時50分車で出発、15Kほど走り林道入口、ここから先は携帯電話が通じない。3日間下界からの情報が全く入らなくなる。さらに車で40Kほど、新冠湖の美しい景色を見ながら7時55分「イドンナップ山荘」に到着。ここから徒歩になるため準備を整え8時20分、18.5K先の今夜の宿泊地「新冠ポロシリ山荘」を目指して歩き始める。山荘は避難小屋のためシュラフ、マット、3日分食料と少々のアルコールを詰めたザックは重い。さらに、日高山系には多くのヒグマが生息し、この林道は頻繁に現れるようだ。その証拠品の糞が林道に点々と残され、草むらの影には息を潜めてヒグマが我々を見守ってくれているという緊張状態だ。その熊さんに我々も敬意を表し鈴、ホイッスルそして熊スプレーを準備した。歩き始めると直ぐに第1ゲート、第2ゲートそしていこい橋ゲートと厳しいゲートが続く、林道は歩きやすく整備されているが、すぐ横の崖は崩れやすい岩で崖崩れ防止ネットが所々に掛けられ、谷側の道端は実際に崩れている箇所が多くあった。単調な山道だが高低差約300~400m、アップダウンが思っていた以上に何カ所もあり徐々に体力を消耗する。そんな中で、山荘まであと10Kmや5Kmの表示板は気持ちを奮いたたせてくれた。奥新冠ダム、幌尻湖を過ぎ、歩き初めてから約7時間、15時22分、三角屋根の山荘到着。

7月15日:2日目「笹藪漕ぎとカール」

午前4時起床、いよいよ幌尻山山頂(標高2052m)を目指す日だ。天気も晴れ。山小屋(標高780m)を4時45分出発。昨年はコロナ禍の影響でこの山荘が使用禁止となり、登山道の整備もなされず荒れ放題の状態だった。今年の6月に新冠ポロシリ山岳会のボランティアにより一部整備されたが、全体的にはまだまだ荒れていた。

小屋を出発すると沢沿いに割合平坦な道を進んでいくが、崩落箇所にロープのある高巻きがあり油断ならない。5時44分、このコースの下の徒渉箇所を飛び石で渡り、標高差1100mある山頂まで長い登りだ。ここから「笹藪漕ぎ」が始まる。普通に歩いていて上から見ると、笹藪で覆われていて全く道がわからない。笹を漕ぎながら道を発見出来る時はまだ良い方で、笹の高さが背丈を超える箇所では、笹の下に潜る「笹潜り」をしないと道が発見出来ない。前夜に雨などが降った次の日だったら体中ずぶ濡れになっていただろうが、幸いにも我々が登った数日間は晴天続きだった。日本百名山のなかで、こんなにも笹藪漕ぎを体験できる山はここしか無いだろう。

笹藪は、下の徒渉後の登りはじめから視界の無い急坂へと続き、7時48分中間地点標識を過ぎてしばらくするとやっと約2時間の笹藪漕ぎが終わる。そんな初めての笹藪漕ぎは楽しい体験でもあるが、大きく体力を消耗し歩行速度を著しく低下させた。やがて、上の徒渉箇所に到着。水場でもありしばし休憩となる。標高1600mを超えると森林限界を過ぎ低木のハイマツになり一気に眼前の視界が開け、稜線直下にある「大岩」が見えてくる。登りの勾配はさらに角度を増し高度感が味わえる。大岩は見えているのだが、笹藪漕ぎの疲れも出てきて思うように足が前に出ずなかなか近付かない。息を切らせながら標高1800m位まで登るとエゾツツジ、ヨツバミヨガマ、チシマフウロなどの高山植物のお花畑が疲れを癒やしてくれる。そこから一登りして10時45分 日高山脈の最高点2052m幌尻岳山頂に立った。この日の空は青空一色。日高山系の中心部にある幌尻岳山頂からは周囲360度の山又山の他では見られない絶景が広がり、南東には鋭い山容のカムイエクウチカウシ山、エサオマントッタベツ岳などや少し雪を残した眼下の北カールや東カールが望める。

日帰り登山では、山頂に着くと昼食をとり、時間の余裕が無いせいもあるが忙しく下山を始める。せっかくの絶景をできるだけ楽しめる時間的余裕がこれからの登山には欲しいものだと思いながら、今日は山頂で約2時間、昼食や珈琲をゆっくり飲み、贅沢な昼寝などをした。また、山頂から少し先の肩まで進み、戸蔦別岳に続く稜線が上縁となる見事なカールヴァントが熊の遊び場となっている七つ沼を取り囲んでいる絶景を撮影したりと贅沢な時間を過ごした。

13時5分下山開始。この頃に山頂からの青空に雲が少し掛かりはじめていた。山頂からはピストンで一気に下山したが、下りの笹藪は登りより山道が発見しづらく、笹に足を取られ不安定になった。それでも、16時48分山荘に到着したときは疲れはてた状態で、夕食もあまり喉を通らなかった。このコースの標準時間は往復で約7時間。我々は山頂での2時間、途中休憩の1時間を差し引いても標準より約2時間遅いペースとなった。今回の登山道の整備状況、特に笹藪漕ぎや昨日の林道歩きの18Kの疲れなどの要因でゆっくりペースに成らざるを得なかったのだろう。しかし、標準時間は参考時間であって自分の体力やその日の環境により異なるので、まずは安全第一を確保することで時間は二の次だろう。

7月16日:3日目「ヒグマとの遭遇」

4時起床、晴れ。朝食のフリーズドライで朝がゆを食べ、山荘5時25分、帰りの林道18.5Kを歩き始める。アップダウンは続くが全体としては緩い下りのためか歩行速度は行きより少し速い。奥新冠ダムを過ぎ、左に新冠川を見ながら歩いていた7時40分、林道より約2~30m下の土手草むらに一匹のヒグマを発見した。震える手でカメラのシャッターを切る。熊も我々に気付いた。ヒグマは臆病で人を見ると逃げると思っていたところ、突然、熊が立ち上がり両手を挙げたファイティングポーズをとり我々を威嚇(その後の調べによるとこのポーズは、熊の探査ポーズらしいことがわかった)しているようだ。これ以上この場にいるのは危険と判断。ゆっくりと後ずさりし現場を後にしたが心臓の鼓動は張り裂けそうだった。なんとか事なきを得ずにすんだが、熊に出会うこと自体が珍しく、まして体長1.5m位の熊が威嚇の姿勢をとった姿を見られたことと命の危険が無かったことの両方で運が良かった。その他にも、この林道では人に驚かない「尻尾の綺麗なキタキツネ」にも出会うことができた。気温は30度を超えていて北海道では何十年ぶりかの猛暑、そのうえ熊に出会った緊張感もあり喉がからからになるも、山道には数カ所の冷たく旨い湧き水があり大いに喉を潤してくれた。

小屋を出発して約6時間、11時35分に登山口のイドンナップ山荘に無事到着。直ぐに車に乗りまた2時間の林道を走り、「新冠レコードの湯」に飛び込み、夕食はホテルのテラスでジンギスカンと冷たいビールを飲み、太平洋に沈みゆく夕日を眺めながら3日間の疲れを癒やした。

        

         

利尻

山行日:7月19日(晴れ)

参加者:3名

タイム:宿出発4:30→登山口発4:36→甘露水4:51→長官山8:20→利尻山頂10:55、下山開始11:35→

長官山13:12→登山口着16:06

(行動時間:11時間半)

登山当日の天気は晴れ、暑い日だった。宿の送迎車で「鴛泊コース」の登山口(220m)のある北麓野営場についたのは、4:36。早速、靴底を洗って入山する。15分位歩くと三合目の名水100選に選ばれている「甘露泉水」に着きペットボトルにたっぷりの水を詰める。利尻山は山頂10合目を頂点として各号目ごとに標識があり、山頂までは一本道で迷う心配はない。5合目くらいまでは針葉樹林の散歩道のような気持ちの良い山道を登る。島には蛇や蝮、ヒグマはいないと言われているので安心だ。ただ2018年ヒグマが20Kmの海を渡ったと報道され地元に驚愕が走ったが、その後の専門家の調査によれば「もう島には99%いない」と発表され現在は落ち着いているようだ。

6合目の第1見晴台からは海岸が見え始め鴛泊港や鴛泊の町並みが見える。しかし、今日は雲が海にかかり礼文は見えなかった。少しずつ勾配が増し7合目胸突き八丁、そして第2見晴台、なんとか4時間以内で8合目長官山(1218m)に着くと展望が一気に開け、眼前に少し山肌に残雪を残し高くそびえる利尻山が飛び込んでくる。さらに15分ほど歩くと利尻山避難小屋につく。急斜面を登ると9合目、崩壊しかけているザレ場が続く。登山道の試験的な補修もしている。土壌がもろく踏みつけや雨水の流水により急速に浸食が進んでいるらしい。ポット状の階段などもありまるで工事現場のような場所を登る。このあたりから、リシリヒナゲシ、ハクサンイチゲなどが現れ山頂にかけてリシリリンドウ、リシリオウギ、トラノオなどの高山植物の天空のお花畑。9合目半で沓形コースの分岐点と合流。

そして、10:55山頂到着。山頂は北峰(1719m)と南峰(1721m)の双耳峰。山頂利尻神社の奥宮としての祠は北峰に鎮座し、ここを利尻山頂としている。南峰への道は崩壊が進み危険なため一般登山者は登らない。頂上からの広大な眺め、周囲に広がるお花畑、圧倒的な迫力のローソク岩、雪渓やイワツバメなどが疲れを癒やしてくれる。

11:35下山開始。下山は同じ道を下る。下山時、長官山からの利尻山は登りの時と光が違いさらに美しく見えた。暑い日だったので、水は2Lを持って行ったが長い下山時に全て飲み尽くし、終着近くの甘露泉では、ペットボトル2本を一気飲みし、登山口へは16:06に無事到着した。利尻の温泉に入り、上手いビールとウニ・イクラ丼を食べたことは言うまでも無い。

(注)国土地理院では利尻山という名称がつけられているが「利尻岳」、「利尻富士」、「利尻火山」とも呼ばれている。

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