埼玉支部設立15周年記念講演会のご報告
過去に学び 未来につなぐ
「あなたを待っている山がある 登山愛好家 田部井 政伸氏をお迎えして」
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■日程:2025年11月29日(土)
■場所:ウェスタ川越 2階活動室1・2(埼玉県川越市新宿町1-17-17) 講演 14:00~16:00
■講演者:登山愛好家 田部井政伸氏、日本山岳会 副会長 柏澄子氏
■演目:二部構成 第一部:「妻は妻、私は私」 第二部:「田部井淳子さんの遺したもの」
■協力:一般社団法人 田部井淳子基金
■後援:埼玉県、埼玉県教育委員会、川越市、川越市教育委員会、一般社団法人 埼玉県山岳・スポーツクライミング協会、埼玉新聞社
■参加者数:申し込み 133名、実参加者 112名(埼玉支部 41名、JAC会員 8名、一般 63名) ※スタッフ 11名(埼)、講演者 2名を含む
■講演概要
【第一部「妻は妻、私は私」】
小学五年生で登った赤城山が初めての登山であり、ボーイスカウト活動を通じて自然を五感で感じることを学んだ。
高校生のときに 結核性骨盤カリエスでの入院経験から、毎日を一生懸命に生きることを考えている。退院する時には主治医から許可を得て、全力で病院の廊下を走った。その当時の先生とは未だ親交がある。
就職後、職域山岳部に所属。当時では珍しく、大学山岳部に負けないよう厳冬期のクライミングなど難易度の高いことに挑戦していた。核心部だけクライミングをする人も多い中、登山とは頂上につかないといけないという信念を持っていた。
妻・淳子さんとの出会いは鷹取山の岩場。お互い雑誌の記録で名前は知っていたが、その時に同じ赤いシャツを着用していたことがきっかけで声をかけ、交流がはじまった。
結婚は、一人よりも二人でいるほうが経済的にも行動的にもプラスになるものであり、淳子さんは常に前向きで全てをプラスにする女性だった。
結婚後、三大北壁登頂のため、会社と掛け合い休職制度を作り、6ヶ月休職してヨーロッパ遠征を行った 。シベリア鉄道でヨーロッパに入り、帰りはアフリカ~インド経由で帰国した。その遠征で1シーズンのうちにグランドジョラス北壁とマッターホルン北壁を登頂した。本当は1シーズンで三大北壁を登頂することに挑戦していた。「1に登山、2にバイク、3に仕事」がモットーである。
【第二部「田部井淳子さんの遺したもの」】
お互いに反対せず気持ちよく送り出し、カレンダーに先に予定を書き込んだ方が優先。カレンダーに書き込むのは、お互いにどこに行っているのか確認の意味もある。
今は子供たちとカレンダーに予定の書き込みをしており、外出時は必ず顔を見て挨拶し、着ている服を確認することで、万が一に備えている。
長期遠征などはどちらかが子供と残るルールで子育をしたが、淳子さんの遠征中は自分も好きなことをしていた。
淳子さんは、がんになっても前向きに頑張り、最後まで自分のやりたいことをしていた。
映画ではお互いを「お父さん、お母さん」と言っていたが、本当は「おじさん、おばさん」と呼び合っていた。
淳子さんは「東北の高校生の富士登山」に尽力し、その情熱を表すエピソードも多々ある。
富士登山の参加費は、高校生が自分で払えるであろう3,000円に設定した。自分のお小遣いで参加する高校生は、何か意志を持って参加しているだろうから、志を持つことの大切さを教えていた。また、最近は高校生には多くの大人たちの協力で登山ができていることも教えている。
何かを変えたくて富士登山に参加する子も多く、そして登頂後の皆の目は輝きに満ちている。
この活動は、登頂人数1,000名、登頂率100%、無事故の登山を目指している 。将来的にこの高校生達が東北、ひいては日本の力になることを願っている。
淳子さんの最期の山は富士山の6合目。そこで待機し、下りてきた子供を自ら迎えて讃えてあげていた。映画で演じていた、富士山で二人で座っているシーンは著書から引用している。富士山では実際に映画のように淳子さんのストックをひいて登った。
淳子さんは、自身で立ち上げた登山の会「MJリンク」で政伸さんのような人と結婚するように周りに話しており、「大当たりの旦那さんだ」と言っていた。
お互いプラスになるのが結婚。今までずっとそれでやってきていた。自分の家の物差しで一生懸命生きて、楽しんで、周りに迷惑をかけなければよい。楽しく生きて人生をいかに豊かにできるか、それが大事である。
■まとめ
本講演会は埼玉支部設立15周年を記念し、埼玉支部ゆかりの登山家ということで田部井政伸氏に講演をお願いしました。
偶然にも同じ年に田部井淳子氏のエベレスト登頂から50年を迎え、さらに開催日が映画公開直後という絶好の日程ということで申し込みは直ぐに満員となり、講演も笑いあり、映画の裏話あり、ほろりとするエピソードもありで大変盛況に終えることができました。
田部井政伸氏の語る真摯な山への情熱と人生観、互いを尊重し高め合ったご夫妻の絆は、全員に大きな感銘を与え、参加された多くの登山愛好家に山の魅力を再認識していただくとともに、埼玉支部員たちの絆の再確認とさらなる結束の場となりました。
今回の講演は次の20周年へ向けて、支部として記念行事の経験を積む記録を残す意味がありましたが、それ以上に大きな意味を持った講演会になったと確信しています。
最後に今回の講演会開催にあたりご尽力、ご協力していただいた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。
報告:15周年記念実行委員会 若林優子





