安全登山の基本1
*上毛新聞「視点オピニオン」に2024年12月から’25年10月まで、7回にわたり掲載されたコラムを上毛新聞社の許諾により掲載します。
執筆:根井康雄(日本山岳会群馬支部長)
こんな登山は危ない 事故招く過信と無計画
登山は人気のアウトドアスポーツの一つです。愛好者人口は、統計の取り方によって幅はあるものの500万~1000万人規模とも言われています。
登山といっても、運動としては歩くことが基本で、冬山や岩登りなどの危険を伴う登り方をしない限り、富士山へも登れてしまうように思われがちです。それだけに、心もとない登り方をしている「にわか登山者」が多いのも実態です。県内でも谷川岳はもちろんですが、尾瀬や赤城などでも多くの遭難事故が起きています。
もしあなたが次のような登山をしていたら、まずは次回の予定を取りやめ、山岳会や山の会への入会、講習会への参加などを真剣に考えてほしいと思います。
第一に、地図もコンパスも持たずに登っていませんか? 単独で、あるいは少人数で、地図もコンパスも持たずに安易に登るのは危険です。道迷いの恐れや危急時の対応能力の欠如など、リスクを背負って登っていると言っても過言ではありません。
また、経験者や指導者の後ろに付いて行けば何も考えずに山頂にたどり着けますが、それも極めて危うい登り方です。そのような登り方をしていると、いつまでたっても登山者として自立することができませんし、万が一パーティーから離れたら途方に暮れてしまうでしょう。安全に山を楽しむためには、リーダーの下でも常に自分のいる位置を確認し、目指す方向をしっかり見極めることが何よりも大事です。
第二に、計画書を提出せずに登っていませんか? 不幸にも遭難する登山者は、登山計画書や登山届を出さない割合が極めて高いという現実があります。自分がリーダーでない場合も、計画の全容をしっかり頭に入れ、登山計画を家族や仲間に伝えておくことが安全登山の第一歩です。
第三に、山岳保険に入らずに登っていませんか? 「自分は大丈夫」と何の根拠もない過信で無保険で山に登るのは、自賠責保険に入らず自動車を運転するのと同じ暴挙です。保険に加入している登山者は一般的に慎重冷静で、遭難事故に遭う可能性は格段にゼロに近づくはずです。
最後に、情報をインターネットや交流サイト(SNS)に依存していませんか? インターネットは確かに便利で、情報源として有用なツールですが、情報の信頼性には注意してください。中には自己過信とも思えるような投稿も目立ちます。ネット情報は参考程度に考え、地形図や信頼性の高いガイドブック、そして経験者の助言、現地情報を重視し、緻密な計画に基づいた、落ち着いた安全な登山を心がけてほしいと切に願います。
登山を続ける上で知っておくべきことは他にもたくさんあります。それらは次回以降、整理してお伝えしていきます。(上毛新聞2024年12月4日付 視点オピニオン)

